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65歳定年延長義務化の問題点、定年退職年齢、再雇用に関する内容を初心者向きにわかりやすく解説。

◆定年延長義務化・再雇用の解説

 日本はこれまでに幾度と無く年金制度の変更が行われてきておるのはご存知の事じゃろう。

 そして、この流れの中で労働条件や定年延長義務化により定年退職年齢までも大きく変更してきた時代背景がある。

 60歳定年時代は終わりに向かい65歳定年制へ。

 そして定年延長義務化が決定されて間もなく、更に深刻な高齢化社会を迎える日本では68歳、70歳定年案も具体化しつつある。

 めまぐるしく変化する定年制度の定年延長の流れ。

 その代償として大きな負担を強いる事になったのは企業や若者世代である事は言うまでもないことじゃろう。

 大きな代償の中で成りたっておる再雇用制度が抱える給与や待遇に関する様々な問題点。

 当サイトではこのような定年延長制度の問題点や制度の基本概要に関する情報を専門に入門者向きに解説を加えておる。

◆定年退職は何歳?法令で定める年齢

 何十年も通い続けた会社もいよいよ定年を迎える。定年退職の日は感慨深いものがあるじゃろう。

 定年とは社内規定、及び就業規則等で定めた規定年齢に達した従業員との労働契約が自動的に終了する制度の事じゃ。

 この定年制によって雇用関係を終了し退職することを「定年退職」と呼んでおる。

◆終身雇用神話の崩壊

 日本では終身雇用神話が定着しておった時代があった。

 この終身雇用という言葉の定義は、同一企業で定年を迎える日まで雇用が維持されるという意味であり、世界的には珍しい日本独特の文化でもあるのぉ。

 尚、日本の企業の多くは古くから定年制を設けており、実質的には終身(生涯)に渡り雇用(仕事)が守られるという意味ではない。

 しかし、能力主義ではなく年功序列を基軸とする日本の文化、そして定年後も公的年金、及び企業年金によって老後の生活までも守られるというまさしく終身に渡り人生が守られる仕組みが定着しておった時代があったのも事実なのじゃ。

 現在は時代の変遷に伴いこの終身雇用神話は崩壊しておる事は誰もが気づいている事実となっておる。

 定年後の安泰どころではなく、定年まで同一企業で勤め続けることさえも困難になってきておるのが現状なのじゃ。

◆定年退職は何歳?

 定年制のある企業では指定した年齢に達すると労働契約が終了し定年退職となる。

 定年退職を迎える事さえも難しくなりつつある日本ではあるが、ここからは定年退職に関する具体的な知識について確認しとおくとしよう。

 ではまず、この定年となる年齢はいったい何歳と定められておるのか?

 この答えは「各企業によって異る」というのが正解となる。

 突然、驚かれた方も多いかもしれんが、定年制度は法令で設置が義務化された制度ではない為、定年年齢を80歳に定めても良いし、定年制度そのものを定めなくとも良いことになっておる。

 要は各会社の就業規則や定年退職規定で自由に設定することができるようになっておるという訳じゃ。

◆定年退職年齢の下限は60歳

 しかし、現実的には何歳に設定しても良いという事でもない。

 定年制を設ける場合、法令では、「60歳を下回る定年年齢を定めることはできない」と規定されておるのじゃ。

 会社の就業規則では60歳以上の定年制で定年年齢が設定してあれば何の問題もないという訳じゃ。

 「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」では定年延長を義務付けた法案となっておるが、これは労務の継続を希望する者に対し雇用を義務付けておる法案であり、就業規則で定める定年年齢を65歳に設定するという事とは意味合いが異なっておる点を覚えておく事が大切じゃ。

定年制度は60歳で変わらず【画像】

 尚、就業規則で一昔前の「55歳定年」などで定年制を定めている場合…⇒続きを見る

◆定年制は55歳から60歳そして65歳へ変更

 日本は世界の中でもトップレベルの長寿国であり、少子高齢化が急速に進み世界の中でも過去に類を見ない高齢化社会へ突入することが確定しておる。

 このような過去に事例のない高齢化社会へ加速する日本には、避けては通れない大きな問題を抱えておる。

 この問題とは、その世代の若者がその世代の高齢者の老後資金を支える仕組みとなっておる「年金制度」の存在じゃ。

 年金制度は自分が支払ってきた年金が運用されて将来帰ってくると思っておる方が多いが、年金はその世代の労働者がその世代の高齢者の年金を支える制度である点をまず把握しておくことが大切じゃ。

◆法令により65歳までの雇用が義務化

 少子高齢化が進む日本では、既に運営が実質不可能となっている年金制度を支えるために幾つかの法改正を続けてきておる。

 この改正とは大きく分類すると年金支給年齢の変更と大幅な増税策を実施する為の法改正じゃ。

 現在の日本は、この年金制度を維持するために、増税と支給年齢の変更しか手段がないという状況にまで陥っておる。

 このような背景もあり、定年後から65歳に達するまでの期間では、無収入状態となる高齢者が多く出て来る新たな問題が生まれることとなった。

 そして、この無収入期間を埋めるための措置として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」を定め、企業は65歳まで継続して労働者を雇用する「雇用確保措置」の導入が義務付けられたのじゃ。

定年延長義務化の背景問題【画像】

 60歳から年金支給を受けられると思っていた退職間近の世代の人にとっては、この年金支給年齢の改変はこれから新たに老後資金を準備するには十分な時間が残されておらん。

 これは、ベビーブーマー世代(第二次世界大戦の終結直後に出生率が急上昇した時期)に生まれた世代が一気に年金受給世帯へと移行し始めた現在の日本においては深刻な問題になり得る。

 その為、この定年延長義務化は下記65歳定年延長義務化の経過措置を見ても解る通り、無年金となる期間が生じないように段階的に施行される事になっておるのじゃな。

◆定年延長義務化の経過措置について

 定年延長義務化法案の施行開始は2013年4月から始まっているため、定年延長は既に開始されている制度となっておる。

 しかし、突然定年が5年間も伸びるという事は、企業にとっても個人にとっても大きな負担となり、定年規定の改定などにかかる準備期間も含め、一定期間の段階的な経過措置が盛り込まれておる。

 以下に段階的な経過措置の概要をまとめておくので確認しておくことじゃ。

65歳定年延長義務化の経過措置【画像】

 尚、上記図を見ても解る通り最終的に65歳定年制が完全義務化されるのは2025年4月からとなっておる。

 2013年4月から12年間かけて段階的に定年延長義務化…⇒続きを見る

◆定年退職の日・退職日4つのパターン

 高年齢者の雇用の安定等に関する法律に基づき企業が65歳まで継続して労働者を雇用する雇用確保措置の導入が義務付けられたのはここまで解説してきた通りじゃ。

 しかし、再雇用が義務化されたとは言えど、多くの企業の退職年齢に関しては従来通り60歳が定年であることは変わらない。

 その為、ここでは基本的な退職日の決め方について一度確認しておくとしよう。

 60歳間近となり定年退職の日が近づいてきた方は、その日を迎える前に具体的な退職日の詳細日程を確認しておく事が大切じゃ

 会社が定年制を就業規則で定めておる場合は、定年退職日が幾つかのパターンで定められておるものじゃ。

 尚、会社が定める退職日の設定は大まかに以下の4つのパターンが考えられる。

退職日の決め方4つのパターン【画像】

 以上は、多くの企業が就業規則内で退職日を決めるための基準として利用しておるものじゃ。

 ここでは、この退職日の設定4つのパターンの内容をひとずつ確認しておくとしよう。

◆①60歳の誕生日に達した日を退職日とする

 法令では60歳を下回る年齢で定年を設定することができないと定められておる。

 その為、多くの会社では60歳に到達する「60歳に達した日」を定年退職日として設定しておるケースが多いものじゃ。

 60歳に達した日とは、各個人の誕生日によって日程が異る事を意味しておる。

 同期入社で長年支えあいながら頑張ってきた同僚であっても誕生日が同じでない限り、退職日は異なってくる訳じゃ。

 尚、ここで注意しておきたいポイントは60歳に達した日が誕生日当日ではないという点じゃ。

 法律上の60歳に達した日とは、60歳の誕生日の前日と定義しておる為、例えば6月1日生まれの方の場合は5月31日が退職日として設定されることになるのぉ。

◆②60歳の誕生月の末日

 ②の60歳の誕生月の末日を退職日と設定するケースでは、そのまま誕生月の末日に労働契約が終了することを意味しておる。

 ①の事例では月内に複数の退職者がいる場合に、事務手続きが複雑になりがちだが、この末日設定である場合は当該月に定年退職を迎える社員の事務手続きをまとめて行う事ができるため効率的と言えるじゃろう。

◆③60歳の誕生月に属する賃金計算の締め日

 先ほどの誕生月の末日に退職日を設定するケースでは、賃金計算の締め日と異る場合に、日割り賃金の計算が必要となるのぉ。

 その為、③60歳の誕生月に属する賃金計算の締め日と退職日を設定することで、日割り賃金の計算が不要となり、より効率的に事務手続きが行いやすくなるのぉ。

 近年では、誕生月の末日よりも企業ごとの賃金計算期間を考慮した退職日の設定が多くなっておる。

◆④60歳の誕生日以降の最初の3月31日

 続いて最後は④の60歳の誕生日以降の最初の3月31日を退職日とするケースじゃ。

 このケースは年度ごとに退職日を決めるため、各個人の誕生日によって働く期間の差や退職金額、生涯賃金に差が生じないため不平等感が少ないという利点があるのぉ。

 大手企業では人事採用を年一回に固定している企業などでは誕生日毎の設定である場合、徐々に欠員…⇒続きを見る

◆65歳定年3つのパターン

 平成25年4月2日から開始されておる65歳定年制。

 この65歳まで定年が延長された制度の正しい概要をまだしっかり把握できていない方も多いのではないじゃろうか?

 ここからは65歳定年制の具体的な内容について確認しておくとしよう。

◆65歳定年制の基本概要

 65歳定年制の基本的な内容は、簡潔に述べると現在までは法令により60歳定年が義務付けられておったが、今後は65歳まで定年延長が義務付けられる事を意味しておる。

 この65歳定年延長は本人の退職希望や会社の就業規則で定めた選定基準の適用外の場合を除き、現在は定年制を定めていない企業の会社員以外は、原則として全ての企業労働者が65歳定年制の元で労働契約を締結していく事になる。

 但し、この大規模な定年制の変革に関しては企業に莫大な負担を強いる制度でもある事から、65歳定年制は段階的に制度を進行していくシステムとなっておる点がポイントじゃ。

◆65歳定年延長に際して講じるべき3つの措置

 65歳定年延長に関する基本概要を定めた高年齢者雇用確保措置、いわゆる「高年法」では、この65歳定年延長を実現するために企業が行うべき措置として以下の3つの措置を講じることを義務付けておる。

 また、現在は3つの選択制となっておるが、最終的には後述する②継続雇用制度で対応する事も決定されておる。

 その為、会社員だけでなく雇用主側もしっかりと改正された定年制度を把握しておくことが大切なのじゃ。

◆①定年の引き上げ

 ①の定年の引き上げは、その名の通り、現在までの60歳定年制を65歳以上の定年年齢に引き上げるという意味じゃ。

 定年年齢の設定は「60歳を下回る定年年齢を定めることはできない」という決まりはあるが上限年齢の設定はない。

 その為、定年年齢は各企業ごとに60歳以上に設定する事はもちろん可能という訳じゃ。

 尚、サントリーなどの大手企業はいち早くこの定年の引き上げを実施しておる。

①定年年齢の引き上げ【画像】

 しかし、このような定年年齢の引き上げといった全社員同等の雇用条件を引き継ぐ措置は一定以上の体力のある企業でなければ中々選択することが難しい措置じゃ。

 一度就業規則で定めた制度は、簡単には変更が出来ない事もあり、永続的に給与を支給し続ける事が予測できる企業でなくては定年年齢の引き上げを行うことが難しいのが現状じゃろう。

◆②継続雇用制度の導入

 65歳定年延長が決まった現在では、最も多くの企業が導入しておる制度がこの②継続雇用制度の導入じゃ。

 継続雇用制度は(A)勤務延長と(B)再雇用の2つの選択肢から選ぶことが可能となっておる。

 尚、(A)勤務延長と(B)再雇用は天と地ほどの待遇の違いがある点を把握しておくことが大切じゃ。

 (A)勤務延長の内容は60歳以降に関しても職務や賃金などの労働条件の変更せずに継続して雇用する事が条件となっておる。

 これは純粋に、65歳以降まで今までと同じ待遇で仕事ができる事を意味しておる。

 対して(B)再雇用は在職中の経験や、個人の技術力などを活用しながら委託社員など労働条件を変更して雇用する事を意味しておる。

②継続雇用制度の導入【画像】

 尚、雇用形態に関しては正社員である必要はない。

 現実的には、契約社員や委託社員、アルバイトとして再雇用され、正社員時代の待遇からは程遠い低い賃金水準となるケースが大半じゃ。

 現実的には日本の企業のほとんどが、この継続雇用制度の「再雇用」を選択しておるのが現状じゃ。

◆③定年の定めの廃止

 ③の定年の定めの廃止とは、年齢による定年制度を廃止し、社員が希望する限り何歳でも継続雇用するということじゃ。

 年齢という概念に縛られずに能力主義を通す企業であれば、このような選択が可能であるのかもしれん。

 実際に能力主義が基本であるアメリカでは、定年制度…⇒続きを見る

◆再雇用と勤務延長の違い

 定年延長義務化に伴い、企業が今後導入すべき3つの方法については前項で解説してきた通りじゃ。

 この3つの方法の中でも②つめに当たる継続雇用制度の導入に際して、「再雇用」「勤務延長」の2つの方法があると述べた。

 ここでは、この2つの違いについてもう少し具体的に踏み込んで内容を確認しておくとしよう。

◆最も大きな違いは給与水準の違い

 企業が継続雇用制度の導入を検討する場合、大半の企業が選択するのは一端会社を退職した後に改めて従業員と雇用契約を締結する再雇用制度じゃ。

 定年延長義務化は企業にとっては熟練した技術者や経験豊富な人材を繋ぎ止める事が容易となる魅力的な制度とも見れる反面、希望する全従業員を雇わなければいけないという甚大なリスクがあるため、再雇用を選択する事は当然の流れという訳じゃな。

 尚、再雇用として改めて従業員と雇用契約を締結する際の給与水準は、退職時よりも圧倒的に低くなるケースが大半じゃ。

 各企業ごとの再雇用に関する給与の取決めが異なる為、一概に給与水準を述べる事は不可能じゃが、一般的な相場としては退職時の40%~70%程度が相場ラインの目安と言えるじゃろう。

 尚、再雇用で給与の40%以下など大幅な減額が行われるケースとしては役員が退任し退職し、その後再雇用されるケースがあるのぉ。

 役員の場合は高額の報酬を得ているケースが多く退職時に退職金の支給を受け、その後も顧問などとして会社に残るケースがある。

 この退職金支給条件として、再雇用後の給与は50%以下でなければいけないという取り決めがある為、大幅な減額となる訳じゃ。

再雇用後の給与水準相場の目安【画像】

 尚、一般従業員の場合でも退職時給与の半額近くまで給与が低くなる事は珍しい事ではない。

 勤務延長契約の場合は、退職時の給与が据え置かれるケースが大半であるのに対し、再雇用の場合は給与が半額近くまで低下する可能性があることを事前に把握しておく事が大切であると言えるじゃろう。

◆再雇用後の収入を補填する部分年金

 60歳以降も再雇用を希望して企業に勤める場合に、給与が大きく減額する可能性があることはここまで解説してきた通りじゃ。

 尚、厚生年金制度では60歳から年金の支給を受ける事ができる「特別支給の老齢厚生年金(部分年金)」と呼ばれる年金支給の仕組みが構築されておる。

 特別支給の老齢厚生年金は、申請が必要となるものの厚生年金加入者であれば60歳以降誰でも支給を受けることが可能じゃ。

 その為、この特別支給の老齢厚生年金の支給を受けながら再雇用後の会社からの給与を受け取る事が可能となっておるのじゃな。

 再雇用後の実質的な家計の収支に関しては、会社からの給与に部分年金額を加算して計算する必要があるのじゃな。

◆高年齢雇用継続基本給付金の給付について

 雇用保険制度では雇用保険の被保険者として加入していた期間が5年以上ある場合、給付金を受け取る事ができる事をご存じじゃろうか?

 この給付金制度は高年齢雇用継続基本給付金と呼ばれる給付金で、再雇用後の給与が退職時の給与の75%未満に減額した場合、最高で退職時給与の15%相当額が支給される制度となっておる。

高年齢雇用継続基本給付金の概要(雇用保険)【画像】

 再雇用後の給与は大きく減額するケースが大半じゃ。

 しかし、生活に支障をきたすような不安がある場合は、会社からの給与と前述した厚生年金の部分年金、そして雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金の計3つの収入 …⇒続きを見る