日本は世界の中でもトップレベルの長寿国であり、少子高齢化が急速に進み世界の中でも過去に類を見ない高齢化社会へ突入することが確定しておる。
このような過去に事例のない高齢化社会へ加速する日本には、避けては通れない大きな問題を抱えておる。
この問題とは、その世代の若者がその世代の高齢者の老後資金を支える仕組みとなっておる「年金制度」の存在じゃ。
年金制度は自分が支払ってきた年金が運用されて将来帰ってくると思っておる方が多いが、年金はその世代の労働者がその世代の高齢者の年金を支える制度である点をまず把握しておくことが大切じゃ。
少子高齢化が進む日本では、既に運営が実質不可能となっている年金制度を支えるために幾つかの法改正を続けてきておる。
この改正とは大きく分類すると年金支給年齢の変更と大幅な増税策を実施する為の法改正じゃ。
現在の日本は、この年金制度を維持するために、増税と支給年齢の変更しか手段がないという状況にまで陥っておる。
このような背景もあり、定年後から65歳に達するまでの期間では、無収入状態となる高齢者が多く出て来る新たな問題が生まれることとなった。
そして、この無収入期間を埋めるための措置として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」を定め、企業は65歳まで継続して労働者を雇用する「雇用確保措置」の導入が義務付けられたのじゃ。
60歳から年金支給を受けられると思っていた退職間近の世代の人にとっては、この年金支給年齢の改変はこれから新たに老後資金を準備するには十分な時間が残されておらん。
これは、ベビーブーマー世代(第二次世界大戦の終結直後に出生率が急上昇した時期)に生まれた世代が一気に年金受給世帯へと移行し始めた現在の日本においては深刻な問題になり得る。
その為、この定年延長義務化は下記65歳定年延長義務化の経過措置を見ても解る通り、無年金となる期間が生じないように段階的に施行される事になっておるのじゃな。
定年延長義務化法案の施行開始は2013年4月から始まっているため、定年延長は既に開始されている制度となっておる。
しかし、突然定年が5年間も伸びるという事は、企業にとっても個人にとっても大きな負担となり、定年規定の改定などにかかる準備期間も含め、一定期間の段階的な経過措置が盛り込まれておる。
以下に段階的な経過措置の概要をまとめておくので確認しておくことじゃ。
尚、上記図を見ても解る通り最終的に65歳定年制が完全義務化されるのは2025年4月からとなっておる。
2013年4月から12年間かけて段階的に定年延長義務化を達成することで徐々に制度を浸透させていく仕組みとなっておるのじゃな。
65歳まで定年延長と聞くと「65歳まで働くことができる」と考える方がいる一方で、逆に「65歳まで勤めなければいけないのか?」と考える方も当然おるじゃろう。
定年制度の延長が義務化された原因は年金制度の度重なる変更に伴い支給開始年齢が変更された事が最大の原因じゃ。
これは支給年齢が遅くなる事によって無年金となる期間が生じてしまう為じゃな。
しかし、会社に勤めているサラリーマンや従業員の立場から考えると、雇用年数が突然延長されてしまうと個人の人生設計が大きく変更となってしまう事も想定される。
例えば定年後は海外暮らしを計画しており既に準備を進めている人にとっては人生設計が大きくくるってしまう事になるからのぉ。
その為、今回の定年延長制度では60歳以降も働くことを希望する者のみ、企業は従業員を雇用する義務を持つと定められておる。
これは、もし60歳以降は働かないと決めている場合は、一般の定年退職扱いとして今後も退職ができることを意味しておる。
但し、これらの規定も各企業ごとの定年規定などで今後変更がなされてくる可能性もあるため、自社の退職規定を確認しておくことが大切じゃ。